サンデュレンの
新規用途を開発する
サンデュレンは硬質なアクリル樹脂にカネカ独自の技術で柔軟性を持たせ、フィルム化したオリジナル商品。柔軟性や耐候性に優れているため、建材の表面材などに多く使われている。嶋本は研究職として約10年にわたってサンデュレンの改良に取り組み、自動車内装などの新規用途に向けた製品開発を手掛けてきた。2011年4月、研究開発部門から営業部門へと異動した嶋本が自らのテーマとして掲げたのが、このサンデュレンの新規用途開発であった。
「サンデュレンの特徴の一つである高い透明性を生かすべく、レンズなど光学用途への適用を検討しました。その過程でアイデアの一つとして浮上したのが、携帯電話やスマートフォンの液晶パネル表面材への展開だったのです」(嶋本)
タッチパネルで操作するスマートフォンの登場により、液晶パネル表面材は硬度や防汚性に優れた強化ガラスが主流となっている。しかし調べてみると、重量や耐衝撃性で有利な樹脂を使いたいという潜在的なニーズが強まってきていることがわかった。もし年間数千万台が販売される携帯・スマートフォン市場に食い込むことができれば、サンデュレン事業は大きく飛躍するはずだと嶋本は考えた。
携帯・スマートフォンの製造会社が集中している中国に狙いを定め、鐘化貿易(上海)有限公司にいる営業部の先輩、和田肇の手を借りて片っ端から営業をかけた。しかしこの分野では全く実績のない製品だけに話は簡単には進まない。粘り強く交渉を進めた結果、大手携帯電話会社から材料指定を勝ち取ることに成功する。