株式会社カネカ

RECRUITMENT 2026PROJECT: Project Story (開発)

Project Story (開発)

食品素材インドネシア進出プロジェクト

「堅くてパサパサ」から
「ふんわり、しっとり」へ。
インドネシアでパンづくりを変えていく。

※所属は取材当時

藤田 洋平

Foods & Agris Solutions Vehicle 技術統括部 商品開発センター
製品開発チーム 主任

2005年入社
先端物質科学研究科修了

兼重 寛

Foods & Agris Solutions Vehicle 技術統括部 商品開発センター
商品開発センター長

1991年入社
農学研究科修了

仙﨑 賢明

Foods & Agris Solutions Vehicle 技術統括部 商品開発センター
アプリケーションチーム 担当課長

1990年入社
化学工学科卒

初の海外工場は、想定外の船出初の海外工場は、想定外の船出

世界4位に相当する2億5500万人の人口を抱え、今後、大きな経済成長が期待されるインドネシア。今、この国の食卓にのぼるパンの「質」をカネカの製パン材料が変えつつある。堅くパサついたパンから、ふんわりとした日本風のパンへ。その流れを生んだのがカネカの製パン用フィリング(カスタード・チョコクリーム等)や油脂系機能材(マーガリン・ショートニング等)である。しかしその歩みは一筋縄ではいかなかった。

カネカの食品事業がインドネシアに事業拠点を設立したのは2013年10月のことである。ジャカルタから南へ50km下ったカラワンに菓子パンなどに詰める具材の材料であるフィリング等の加工油脂製品の製造・販売拠点として「PT. Kaneka Foods Indonesia」を設立。翌年1月に工場が完成し、2月から稼働を開始した。カネカの食品部門にとってはこれが初の加工油脂事業としての海外進出であり、絶対に失敗はできないプロジェクトのはずだった。しかし「最初の1年ほどは、苦戦の連続であった」と兼重は言う。

「理由はいろいろありますが、一番大きかったのは食文化の違いです。食べてもらえば違いが分かるはずでしたが、地元の普通のパンのフィリングはチョコ等水気が無い固形物のようなフィリング。しっとりしたクリーム状で水気たっぷりの日本風フィリングは異質でした。また、価格も高くなり、なかなか消費者に手を伸ばしてもらえなかった」(兼重)

販売数量の伸び悩みが続いて、手をこまねいているわけにはいかなくなった。商品開発センター長の兼重の役割は日本国内で技術を統括することであり、本来、現地に入る予定はなかった。しかし現地の営業部隊が苦戦を続けている様子を見て「日本から人を送り込んで総力戦で、顧客を開拓するしかない」と腹をくくって現地に飛んだのである。

パンのすべてを知るカネカだからできることパンのすべてを知るカネカだからできること

実は長年、製パン材料の開発に携わってきた兼重には、昔から一つの信念があった。
「当社はパンに関し、小麦粉以外の主要な材料の製造について多くの知見を有しています。だから製パンの世界では様々な側面からのソリューションを打ち出すことができる。技術面で対応できないことはないと確信していました」

兼重らはフィリングのサンプルをかついで現地の製パン業者を営業して回った。反応は悪くなかった。元々インドネシアには親日の人が多い。日本から来たというとどこでも大歓迎してくれた。ところがなかなか話が前に進まなかった。しびれを切らして連絡してみると、「サンプルをもらったけれども使い方がわからない」「試してみたけれどもうまくいかない」といった返事が多かった。

高温多湿のインドネシアでは、パンの日持ちをよくするために水分量を抑える作り方が主流。そのためどうしても堅くてパサパサしたパンになってしまう。しかしこの堅くてパサパサしたパンと、カネカのフィリングの相性はあまりよくなかった。
「市場調査をすると、実は現地の人も日本風のソフトなパンを望んでいることがわかりました。我々の技術を使えば水分量を抑えながら柔らかいパンを作ることはできるのですが、現地の業者にはそうした技術がないことがわかりました。現地の製パン業者に当社のフィリングを使ってもらうためには、パンの作り方から変える必要があるわけです。そこで、これまでのような価格勝負の製品売りを脱して、コンサルティング型の技術営業にチャレンジすることにしました」

マーケットが求めるものを何とかして作り上げたいマーケットが求めるものを何とかして作り上げたい

求められる日本風の柔らかいパンを作るためには、生地に練りこむ機能材が不可欠だった。これを担当したのが製品開発部門の藤田である。

実はPT. Kaneka Foods Indonesiaは日本風フィリング製造に特化して設計されており、マーガリンやその他油脂系機能材を製造する設備は用意されていなかった。このため藤田は現状の設備でなんとか工夫して機能材を作るしかなかった。

フィリングも機能材も撹拌して作る点は同じだが、フィリングは加熱して撹拌するのに対し、機能材はマーガリンと同じで冷却しながら撹拌することにより均質化させる。しかし、この工場に冷却装置はない。
「なるべく冷却せずに行けそうな配合を考えて、小さなスケールで実験を重ねて、課題を探っていきました」

最初は自然放冷だけでやろうとしたが、さすがにそれは無理があった。苦肉の策として採用したのが、水道管を撹拌装置の周囲に通した水冷である。
「水道管を取り付けるのもお金がかかると反対されましたが、これだけはやらせてほしいと頼み込んで了承していただきました」

この水冷方式が奏功し、機能材の製造がスタートした。その後も藤田は工夫を重ねて、フィリング用の設備を使いながら、パン生地の練りこみ材となる数種類の機能材の製造を実現したのである。

どんな環境でも
美味しいパンが作れることを実証
どんな環境でも美味しいパンが作れることを実証

一方、日本風のパン作りを指導するために、兼重と共にインドネシアに飛んだのがアプリケーション開発を担当する仙﨑だ。
「まず現地業者の設備を見て驚きました。日本なら廃棄されていてもおかしくないような仕様の古い機械ばかり。生地を傷めてしまう機械を使っている工場もありました。そんな環境でも日本風のソフトなパンが作れる方法を確立しなくてはいけません」

現地に適した製法を開発するため工場の近くに実験用のラボを借りたが、エアコンは壊れていて室内は蒸し風呂状態。発酵機の温度計は機能せず、内部の正確な温度がわからない。重量を測るはかりも壊れていた。最低限必要な計器や道具類は日本から運び、現地の機械を全て手作業で調整しながら使った。
「いかに自分が恵まれた環境で仕事をしていたかに気づいたと同時に、不便な環境でも工夫次第で何とかなることがわかりました」

こうして知恵と工夫を結集して困難を克服し、インドネシアの日本とは大きく異なる環境でも日本風の柔らかいパンが作れることを証明した仙﨑たちは、試作したパンを持って現地の製パン業者をセールスして回った。

「アジア人は欧米の堅いパンよりもしっとりソフトなパンを好む。カネカの機能材やフィリングを使って商品を改善していきましょうと、製パン業者の経営者に訴えました。実際にお客さんの設備でパンの作り方を実演して見せると効果は大きく、次々に採用していただくことができました」

2016年ごろからカネカの機能材やフィリングを使った現地メーカーのパンが市場に登場。これまでにない柔らかさが評判を呼び、たちまち人気商品になった。結果的にこれが市場を刺激し、多くのパンメーカーにもいい影響を与えていると兼重は言う。
「柔らかいパンのおいしさが認知され、多少値段が高くても日本風のパンを食べたいという人が増えてきた。市場も広がり、いい相乗効果が生まれています」

海外の食の質向上に
貢献する
海外の食の質向上に貢献する

スタート当初は販売低迷に苦しんだPT. Kaneka Foods Indonesiaは、いまや工場をフル稼働しても生産が追い付かない状態であり、さらなる夢も膨らんでいる。苦労も多かったが、これまでにない得難い経験ができて楽しかったとメンバーは口々に言う。

「食品業界は安全安心が最優先で、冒険するチャンスは意外と少ない。そんな中で新しい手法にチャレンジして、それが成功につながったのは非常にうれしく、自信になります」と藤田が言えば、兼重は「近年で一番楽しかった」と語る。

「製品開発、設備、営業先、商流の選定までほとんどが白紙の状態からスタートして、仲間と共に手作り感覚でビジネスを作り上げるのは、大変だけれども面白い経験でしたね」
仙﨑はソリューション提案の重要性を改めて感じたと言う。

「競争が激化する中で、顧客が求めていることを正しく把握し、製品や技術を理解しながら顧客と会話できる人材が必要。自分自身も質を高めると同時に、そういう人材を増やしていきたいと思っています」

そして何よりカネカの食品事業にとって、今回のインドネシア進出は非常に大きな意味のあるプロジェクトだった。
「これまでカネカの食品部門は国内市場だけでも一定の規模があり、海外進出の優先順位は低かった。しかし国内食品市場は少子高齢化などで縮小が予想されており、早急にグローバル化を進める必要がある。今回、インドネシアという全くの新天地に飛び込んで、顧客の課題に真摯に向き合いながら新たなビジネスを拓くことができたことは非常に大きな経験になりましたし、どこの市場にでも参入できるという自信と勇気を得ることができました」
そう語る兼重は今、お世話になったステイクホルダーや顧客への恩返しの意味も込めて、インドネシアの潜在需要を賄える生産量実現を考えつつ、アジアの大陸側でも同様に食文化への貢献実現を構想している。
「アジアを中心として世界各国へカネカの食品素材を提供し、食文化の質向上に貢献していきたい。これから海外で活躍したいと思っている人は、ぜひカネカへお越しください」

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