安定化フコキサンチン粉末生産技術確立について
―脂肪の燃焼を助ける機能性食品素材の開発を加速―
2014/06/03
株式会社カネカ(本社:大阪市、社長:角倉 護)は、このたび分解を受けやすく安定化が難しいフコキサンチンの安定化粉末の生産技術の確立に成功しました。
フコキサンチンは海藻に含まれるカロテノイドの一つで、通常は褐色脂肪細胞*1に特異的に存在する脂肪を熱に変換するUCP1(uncoupling protein 1)の発現を、白色脂肪細胞*2においても誘導することで脂肪の燃焼を助ける抗肥満作用を有する機能性食品素材です。
当社は、フコキサンチンの安定化技術の確立を北海道大学大学院水産科学研究院(宮下和夫教授)と共同研究を実施し、地域イノベーション戦略支援プログラム*3などの文科省事業を利用して検討を進めてきました。
フコキサンチンは、脂肪蓄積の本体である白色脂肪細胞において、本来発現しないとされる遺伝子UCP1を発現させることで脂肪を燃焼させるユニークなメカニズムをもつ機能性食品素材であることから近年注目されています。しかし、フコキサンチンの大きな弱点は、分解を受けやすく取り扱いが困難な点です。当社はフコキサンチンを安定化する食品素材のスクリーニングを実施し、安定な形態を検討してきましたが、この度、独自技術によりフコキサンチン抽出物を粉末化し、室温で2年間の安定性が期待できる製法を確立しました。更に、北海道大学宮下教授と共同でその吸収性を評価した結果、このフコキサンチン粉末は速やかに体内に吸収されることを確認しました。
開発した粉末はソフトカプセル、錠剤のようなサプリメント形態に加え、食品形態に広く応用できる可能性が示されました。今後パイロット設備での実証実験をすすめ、2014年度内の販売開始をめざします。
フコキサンチンの詳細については、下記サイトを参照ください。
<健康成分情報サイト 健康科学ラボ>
*1:褐色脂肪細胞は、交感神経系の支配のもと、脱共役タンパク質UCP1の働きにより余分なエネルギーを熱に変換する脂肪細胞のことで、主に肩甲骨間、 腋窩、後頚部、心臓、腎周囲に存在する。新生児に多く、成人になるとほとんどが失われるとされる。
*2:白色脂肪細胞は、余分なエネルギーを中性脂肪として溜め込む性質を持ち、エネルギー不足状態に応じてそれを脂肪酸に分解し、血中に放出する機能をもつ脂肪細胞のこと。メタボリックシンドロームなどでは、この白色脂肪細胞の蓄積が問題となる。
*3:函館マリンバイオクラスターという名称で、地域のイニシアティブの下、独自の研究開発テーマと優れたポテンシャルを有する地域の大学等を核とし、その研究開発成果を更に発展させ事業化につなげるために、地域内外の研究機関や企業等が参画して、連鎖的にイノベーションを創出するプログラムのこと。