遺伝子検査分野などの検査診断事業を積極展開
- 多項目同時検出可能な核酸クロマト型チップを本格展開 -
2012/11/22
遺伝子検査診断は感染症、ガンの診断、SNP(*1)等による薬効・副作用予測などの医療分野のみならず、食中毒菌検査、遺伝子組換え食品検査、アレルゲン検査など食品分野での応用も進んでおり、2020年には世界で数兆円規模の市場になると予想されています。
当社は、バイオ・有機合成・高分子の技術を融合し、「遺伝子検査の迅速・簡便化」をキーワードに技術・製品開発を進めています。これまでにPCR後(*2)のDNA増幅の有無(単項目)を目視判定可能な「ピペットチップ型PCR増幅判定ツール」(商品名:D-QUICK)をすでに研究用理化学器具として販売しております。さらに、複数の遺伝子を簡便に一度に検出したいというニーズに対応し、核酸クロマト型チップを開発しました。
従来、複数の遺伝子を一度に検出する際は、マルチプレックスPCR法(*3)により遺伝子を増幅し、電気泳動で確認する方法、もしくはマルチプレックス‐リアルタイムPCR法(*4)によって行われています。前者は約1時間を要する煩雑な方法であり、後者は蛍光を使用するため高額な大型装置を必要とし、同時検出できる遺伝子増幅産物の種類に限りもあります。
今回発売を開始する核酸クロマト型チップはテストストリップ状のデバイスであり、遺伝子増幅後のサンプルを滴下するだけの操作で、特別な装置を使用せず、約5~10分で複数の遺伝子増幅を目視検出できます。本品は、遺伝子増幅産物の両末端に一本鎖DNAタグを付加する当社独自の技術により、一本鎖DNAタグの塩基配列を任意に変更することで数十種類の遺伝子産物の検出に対応することができます。これらの特長により、微生物の有無、特定の作物の混入などの検査において、作業時間の短縮とコストの軽減に貢献できます。
これまで、一部のお客様と協業して参りましたが、今後は、検査診断薬メーカー、検査センター、大学、公的研究機関等との共同開発や当社オリジナルの検査診断薬の開発を加速させ、臨床診断や食品検査などへの分野に積極的に展開し、5年後に30億円の売上を目指します。
当社は2009年に制定された「KANEKA UNITED宣言」で健康に関する分野を重点分野の一つと位置付けております。D-QUICKや核酸クロマト型チップに加え、核酸を迅速・簡便に抽出するキットや増幅効率の優れたPCR試薬も年内に発売開始する予定にしており、検査診断事業として10年後に150億円の売上を目指します。
*1SNP:Single Nucleotide Polymorphism の略。1塩基多型のこと。わずか1塩基だけの違いが、遺伝的な個体差を生じさせており、基本的な体質、医薬品の効果や副作用など、個体差の指標となっている。
*2PCR:Polymerase Chain Reactionの略。核酸合成酵素(PCR酵素)を用いて、特定の遺伝子を増幅する方法。バイオ研究、犯罪捜査などで利用されている汎用技術。
*3マルチプレックスPCR:1本のテストチューブ内で複数の遺伝子を増幅させるPCRのこと。
*4リアルタイムPCR:核酸に結合する蛍光試薬を用いて核酸増幅過程を経時的に測定するPCRのこと。