ベース樹脂の高熱伝導化による新しい高熱伝導性樹脂材料を開発
-第61回高分子学会年次大会における研究発表のご案内-
2012/05/21
今日熱伝導性樹脂材料は、自動車、情報端末、照明のような電気・電子機器の放熱材料として注目を集めています。樹脂は高い電気絶縁性を有し、成形加工が容易である一方、熱伝導率が低い材料です(0.1~0.3 W m-1 K-1)。従って熱伝導性を付与する目的で、大量の熱伝導性無機フィラーを添加する方法が一般的に採られていますが、大量のフィラーを添加すると樹脂材料の比重が高くなる、成形加工性が悪化するなどの問題がありました。
そこで当社独自の分子設計と高次構造制御によりベース樹脂を高熱伝導化し、少ないフィラー添加量で樹脂材料を高熱伝導化する技術を開発しました。熱可塑性樹脂においてこのような技術は世界初です。この技術の適用により、汎用樹脂と比較した際、同等の熱伝導性を発現させるのにフィラー添加量を約20 vol%削減できます。これにより従来技術では困難であった10 W m-1 K-1以上の高熱伝導性または厚み方向への高熱伝導性を有する、成形加工性の良好な樹脂材料の設計が可能となりました。またベース樹脂は植物由来度50 %強のバイオマスポリマーであり、カーボンニュートラルの実現にも寄与するものであります。
当社は電気・電子機器の発熱という課題を解決する熱対策材料(サーマルソリューションマテリアルズ)の開発を積極的に進めています。すでに2008年12月、熱拡散シート「グラフィニティー™」を上市し、2009年4月には独自の反応性オリゴマーをベースにした「熱伝導性RTVエラストマー」を発表、2010年1月には当社の改質PET樹脂『ハイパーライト®』の技術をベースにした「絶縁熱伝導性樹脂」を発表してきました。今般、新技術をベースにした新グレードを積極展開し、5年後の売上高として約20億円を目指します。
新グレードの主な特徴は以下の通りです。
・面内方向14 W m-1 K-1グレードおよび等方3 W m-1 K-1
・比重が1.8~2.1と、金属やセラミックスと比べて軽量。
・V-0相当の難燃性。
・成形流動性に優れ、通常の射出成形機で成形可能。
これらの技術内容の一部は、2012年5月29日(火)~31日(木)の期間でパシフィコ横浜にて開催される第61回高分子学会年次大会および、同年6月12日(火)~13日(木)の期間でタワーホール船堀にて開催される第23回プラスチック成形加工学会年次大会にて発表予定です。
本技術は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)平成21年度イノベーション推進事業の助成を得て研究開発したものであります。