ディスプレイ用薄膜トランジスタ(TFT)向け塗布型有機絶縁材料を開発
2011/09/07
現在、ディスプレイは基板としてガラスを用い、TFTなどのアクティブ素子を各画素に配置して駆動させるアクティブマトリックス駆動が主流となっているが、薄型化、軽量化の要求に応える為に、プラスチック基板を用いたフレキシブルディスプレイの開発が積極的に行われている。
このTFTの絶縁膜としては、従来、窒化ケイ素等の無機材料が使用されているが、製造コストや設備投資の低減、省エネといった点から真空装置を使わない塗布型絶縁膜の開発が期待されている。
また、フレキシブルディスプレイにおいては、基板として使うプラスチックの選択肢を広げるために、より低温で製膜できる材料が望まれている。
ILLUMIKA™ Rは有機TFT向けの絶縁膜用途において複数のユーザーより高い評価を得ており、早期の本格販売が見込まれている。今後は、更に高い絶縁信頼性を活かして酸化物TFT用絶縁膜、タッチパネル用絶縁膜への展開も含めフレキシブルディスプレイを中心に塗布型絶縁膜材料として展開し、5年後に50億円の販売を目指している。
耐熱耐光透明樹脂ILLUMIKA™はすでに3年前から市場展開を開始しているが今回開発したILLUMIKA™ R は薄型化、軽量化、フレキシブル化が求められるディスプレイ市場に向けて、
(1)塗布プロセスの適用によりプロセス簡略化が可能
(2)当社保有の材料設計技術をベースに光硬化反応と熱硬化反応を併用することで緻密な架橋構造を実現し低温・短時間(120℃・10分)のプロセスでも高い絶縁信頼性*1を確保
(3)ユーザーの要望に応じて誘電率*2や表面疎水性(水接触角70°から110°)のコントロールが可能
(4)フォトリソグラフィー性*3によりミクロンレベルのパターニングが可能
等の特徴を武器にディスプレイパネルメーカーを中心に、展開を進める計画である。
*1絶縁信頼性 実製品での使用を想定した電気的ストレス(高電圧印加、電圧の繰返し印加)に対して、絶縁破壊(短絡)や絶縁性低下(漏れ電流の増加)を起こすことなく、絶縁膜としての性能を保持すること。
*2誘電率 物質の電気の蓄えやすさ(分極のしやすさ) を示し、絶縁材料としての性能を示す一つの基準。
高誘電率な材料ほど蓄える電気量は大きく、低誘電率が必要な部材(半導体の配線層間膜など)から高誘電率が必要な部材(コンデンサ、トランジスタなど)まで電子部品における適用箇所により求められる特性が異なる。
*3フォトリソグラフィー 基板などに塗布した材料の表面をパターン状に露光し、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを形成する技術。主に、微細な配線を必要とする半導体素子、液晶ディスプレイパネル等の製造で用いられている。
本技術は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)平成21年度イノベーション推進事業の助成を得て研究開発したものである。