平成22年度高分子学会賞(技術部門)を受賞
テレケリックポリアクリレートの開発と工業化に対して
2011/05/27
「KANEKA XMAP®」は従来のアクリル系、シリコーン系、ウレタン系、エポキシ系の反応硬化型液状樹脂に比較して、
・多様な硬化形式(常温湿分硬化、加熱硬化、UV硬化等)が選択可能である。
・高い耐熱性、耐候性、耐油性、耐薬品性を有し、良好なゴム弾性を発現する。
・硬化収縮が非常に小さく寸法安定性に優れる。
・電気接点障害や周辺汚染を引き起すと言われるシロキサン成分を含有していない。
・分子量分布が非常に狭いため、高分子量ながら無溶剤で低粘度である。
などの特長を有しており、高性能のシーラント・接着剤・コーティング材・ポッティング材等のベースポリマーとして、金属、プラスチック、ガラスとの良好な接着性を活かし、建築用、工業用、自動車用など、既存の液状ゴムでは適応できない多様な用途での利用が進んでいます(*3)。
今回の受賞については、「KANEKA XMAP®」の優れた特性及び初の原子移動ラジカル重合(ATRP)技術による本格工業化に加え、本ポリマーの正確に制御された構造により、レオロジー分野などの学術研究においてもその技術が利用されるなど、社会に与えるインパクトも高分子学会賞に値すると認められたことが背景にあります。
尚、当社が本賞を受賞するのは、1988(昭和63)年以来、通算4回目となります。
(*1)テレケリックポリアクリレートの工業化は試みられていましたが、従来のポリアクリレートの工業的製造法では、分子鎖の両末端に精度良く官能基を導入することや、粘度や硬化後の機械物性に大きな影響を与える分子量及び分子量分布の精密制御が困難でした。当社は、カーネギーメロン大学で開発され基本技術のライセンスを供与されている原子移動ラジカル重合(ATRP)法を応用し、独自の重合制御技術を用いることにより、高度に構造が制御されたテレケリックポリアクリレートの本格的な工業化に成功しました。更に、分子鎖の両末端に多様な官能基を精度良く定量的に導入する独自技術の開発に成功し、各官能基の効率的な硬化を促進することが可能となりました。
(*2)高分子学会賞は、我が国の高分子科学および技術の進歩を図るため、独創的かつ優れた業績を挙げた会員を対象として、「科学」と「技術」の2部門に分けてその功労を顕彰することを目的に制定されています。
(*3)主な採用事例
・建築物の超寿命化や省エネルギーに貢献する「高性能建築シーラント」
・自動車の生産性向上や低排出ガス化に貢献する「現場成型ガスケット」
・自動車や電子機器の性能向上につながる「電気・光学材料」 など