カネカ「ヒト(同種)羊膜由来間葉系幹細胞」による急性脊髄損傷治験を開始

株式会社カネカ IR・広報(Investors & Public Relations)部
2023年8月30日
 株式会社カネカ(本社:東京都港区、社長:田中 稔)は、「ヒト(同種)羊膜由来間葉系幹細胞*1:KA-301(以降、KA-301)」による急性期脊髄損傷の第I/II相試験を開始しました。本治験で使用される細胞製剤は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の産学共同実用化開発事業(NexTEP)の採択を受けた開発事業*2による技術を活用して製造したものです。

 脊髄損傷は、転倒・転落や交通事故などの外傷が原因で生じる疾患です。受傷後早期の脊椎安定化処置や神経学的リハビリテーションを行うことで一定の回復が望めますが、運動麻痺や知覚喪失、膀胱直腸機能の障害など様々な後遺障害が併存する場合が多く、新たな治療法の開発が期待されています。このような難治性疾患に対して、当社は、出産時の羊膜から分離したKA-301を用いる治療法を研究してまいりました。今回、北海道大学大学院医学研究院脳神経外科学教室の藤村 幹教授、川堀 真人講師との共同研究におけるKA-301の急性期脊髄損傷モデルラットでの実証*3を経て、本治験の開始に至りました。
 本治験は、受傷後144時間以内の急性期脊髄損傷・ASIA機能障害尺度B*4を対象として、第I相試験期では主に安全性、第II相試験期では有効性と安全性を評価する計画で、国内の医療機関と連携して実施します。

 先般発表したデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治験*5と本治験によりアンメットメディカルニーズに対して有効な治療の開発を加速させ、グループ会社を含む当社の再生・細胞医療関連事業*6をさらに強化・拡大します。今後も健康に貢献する研究、及び製品開発を積極的に展開していきます。

以 上

                                                                    
                                           研究開発の様子                                       再生・細胞医療研究所(神戸MI R&Dセンター内) 
*1. ヒト(同種)羊膜由来間葉系幹細胞
出産時の胎盤から分離した羊膜に存在する未分化の細胞。筋肉、骨、軟骨、脂肪など間葉系に属するさまざまな細胞に分化する能力や自己複製の能力を持ち、高い免疫抑制作用がある。また、拒絶反応が起こりにくいため他人にも移植しやすいなどの特長がある。さらに、羊膜の採取にはドナーへの新たな侵襲を伴わず、1枚の羊膜からたくさんの間葉系幹細胞が得られるため、大量生産に適している。

*2. 抗炎症作用をはじめとした多様な効果から各種疾患への適応拡大が期待される製剤用羊膜由来間葉系幹細胞の開発事業

*3. Takamiya S et al. Intravenous transplantation of amnion-derived mesenchymal stem cells promotes functional recovery and alleviates intestinal dysfunction after spinal cord injury. PLoS One (2022) Jul 8;17(7)

*4. ASIA(アメリカ脊髄損傷協会)機能障害尺度
脊髄損傷の状態を知覚及び運動機能の程度で示す尺度。A(知覚・運動ともに完全麻痺)からE(知覚・運動ともに正常)までの5段階が設定されている。

*5. カネカ「ヒト(同種)羊膜由来間葉系幹細胞」によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー治験を開始
https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2023/nr2307281.html

*6. グループ会社の株式会社バイオマスター(本社:神奈川県横浜市、社長:長谷川 卓爾)が経営するセルポートクリニック横浜において、独自の自家細胞治療技術を用いて乳房再建をはじめとする形成外科領域の高度医療の提供を行うと共に、同領域や変形性膝関節症などの整形外科領域向けの細胞提供を実施している。